3月17日、パトリス・ルコント監督の新作映画『メグレと若い女の死』が公開されました。
原作は、言わずと知れたフランスが誇る推理作家、ジョルジュ・シムノンの同名作で、主人公のメグレ警視を名優ジェラール・ドパルデューが演じています。
フランスの古典推理小説の代表と言えば、このメグレ警視シリーズですが、シムノンは相当な数の作品を遺しており、メグレ警視ものだけで長短編合わせて八十四編あるそう。
ルコント監督をはじめ、代表作は何度も世界中で映画化されていますが、そういえば、短編はあまり読んだことがありませんでした。
そこで、この集英社文庫から出ている「世界の名探偵コレクション10」から、『メグレ警視』を手に取ることにしたのです。
本書の口絵裏には、メグレ警視のプロフィールが載っていました。
それによると、彼は1887年生まれ。
39歳で警視に昇進。
180センチ、100キロの巨漢で、パリの裏町を自分の足でフィールド捜査を行い、物的証拠よりも犯罪者の心理にこだわって、犯人を自白に追い詰めるそう。
本書には7編の短編が収められていますが、確かに、あっと驚くトリックや、派手なアリバイ崩しなどはありません。
犯人や関係者が何かを隠していることに気づいたメグレが、乱暴な手を使うでもなく、じわじわと相手の心理に迫っていき、淡々と事件を解決に導く。
地道で、地味で、実に辛抱強い操作方法。
ホームズ、ポアロ、クイーンらの鮮やかな探偵手腕や、どんでん返しのミステリーとは違い、パリの下町と、農家出身で粗野なメグレの性格がかけ合わさった、独特の魅力がこのシリーズにはあるのです。
本書の巻末には、訳者の長島良三さんによる解説もあり、彼がシムノン自身からもらった手紙に書かれていた「メグレの誕生」秘話が載っています。
メグレシリーズは訳本がたくさん出ていますが、いくつかの作品をまとめて読んでみたい時や、メグレ初心者の方におすすめの文庫です。
メグレ警視の魅力について、より深く知ることができるかもしれませんよ。
★『世界の名探偵コレクション メグレ警視』
ジョルジュ・シムノン 著/長島良三 訳
集英社文庫
ISBN:9784087485615
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