文学レビュー『フランス怪奇小説集』(A.デュマ、M.ルブラン 他)

ジュニア向けのコーナーから見つけてしまった『フランス怪奇小説集』。
何ともそそるタイトルではありませんか?
この本には、13篇もの怪奇短編小説が収まっています。

この中で一番有名なのはマルセル・エイメの「壁抜け男」かなと思います。
でも、作品自体は無名でも、実に有名なフランスの作家が名を連ねているんです。
ギイ・ド・モーパッサン、アレクサンドル・デュマ、アルフォンス・ドーデ、ギヨーム・アポリネール、モーリス・ルブラン…。
怪奇小説のイメージがない作家も入っていますね。

本書巻末の編者による解説では、ドイツやイギリスの怪奇小説で良く出てくる、魔女や吸血鬼、狼男といった怪異は、フランスの怪奇小説ではほとんど見られないんだそうです。
これは、地理的・風土的な特徴の違いからくるとか。
フランスの方が気候が明るいのですね。

その代わり、地方の土地に根付く伝説を元にしたものや、人間の心理に基づいた恐怖が描かれることが多いそう。
本書の短編小説でも、処刑や人の死、本物の人間に追われる話などが目立ち、フランスの怪奇の方が、リアルで怖い気もしてしまいます。

さて、13篇のお話の中で、一番印象に残ったものをご紹介するなら、ヴィリエ・ド・リラダンの『断頭台の秘密』でしょうか。
死刑囚となり、減刑の希望もほぼ無くなってしまったド・ラ・ポンムレー医師のところに、著名な外科医が面会に来ます。
医者同士、二人には通じるものがあり、外科医は死刑目前のド・ラ・ポンムレー医師に、興味深いテーマを投げかけます。

すなわち、ギロチンの刃が死刑囚の頭部を切断した後も、その自我、つまり意識は保たれるのか?

これを解明するために、外科医が死刑囚にした提案とは…。

おどろおどろしい魔女やドラキュラが放つ恐怖とはまた別の次元でゾッとしませんか。

本書は、数々のフランス文学を翻訳された長島良三氏が編集し、中学生以上を対象とした偕成社文庫のシリーズから1988年に刊行されました。
少し古い本ですが、図書館などには所蔵されています。

フランス文学には欠かせない大作家の作品が並んでいるのはもちろん、建石修志氏の挿絵がまた内容にぴったりで、不安感を後押ししてくれます。
ふりがな付きで読みやすく、長島氏による解説も丁寧なので、フランス文学に興味がある人はぜひ読んでおきたいアンソロジーだと思います。

★『フランス怪奇小説集』
 長島良三 編
 偕成社(偕成社文庫 4066)
 1988年
 ISBN:9784038506604

書籍レビュー文学
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