文学レビュー『パリ警視庁迷宮捜査班』(ソフィー・エナフ)

ハヤカワ・ポケットミステリのシリーズから、パリを舞台にした作品を見つけました。
ソフィー・エナフ『パリ警視庁迷宮捜査班』(原題:Poulets Grillés)です。
本国では現在、シリーズで3冊出版されているようです。

原題の意味は「ローストチキンたち」。
そして、日本語の題名も「迷宮」捜査班ということで、タイトルだけでも興味を引かれませんか?

主人公は、パリ司法警察警視正のアンヌ・カペスタン。
彼女は、過剰防衛で容疑者を射殺してしまい、停職に追い込まれていました。
しかも、夫とは離婚、どん底でした。

そんな時、司法警察局長のビュロンに呼び出されます。
退職の勧告を覚悟していた彼女は、なんと新しい捜査班のリーダーに任命されます。
それも「正統派とは言いがたいメンバー」が40人ほど集められた特別捜査班とのことです。

つまり、警察局のお荷物となっているメンバーを放り込むための、形ばかりの班だったのです。
しかも、仕事は迷宮入りとなった事件を再度洗うこと。
誰も、彼らには期待していないということです。

それでもカペスタンは、やることがあるだけまし! と任務を請け負います。
与えられた部屋は司法当局からは遠いビルの一室で、設備もまともになく、サイレンすらもらえない。
そんな付け焼刃のオフィスに、特別班に配属された警官のうち、何人かが出勤をしてきます。

これがまた、個性的な人物ばかり。
銃で暴走してしまったカペスタンを始め、警察内部のことをドラマの脚本にして成功している警部、組んだバディが次々と不幸な目に遭う通称「死神」の警部補、仲間をマスコミに売りまくるタレコミ屋、アル中、ギャンブル凶、スピード凶…。
読んでいるこちらとしては、彼らのプロフィールを知っただけで、この特別版の活躍にわくわくしてしまいます。

カぺスタンたちは、迷宮入りの事件の中から、2件の殺人事件を見つけ、再調査に当たります。
しかし、その事件はだいぶ昔に起こっており、書類上は捜査が終了しているもの。
他の部署からの助けは借りられない。
しかし、これらの事件の真相を明らかにすれば、自分たちの能力も認めてもらえる!

彼らは、それぞれの特技を活かして、各事件を再び洗い出していきます。
やがて、2つの事件が結びついていることが判明し、さらに、ある意外な人物が疑惑者として浮かび上がってくるのです。

キャラクターそれぞれが持つ強烈な個性とユーモア、そして、複雑な事件の謎の解明。
それが、パリの街を舞台に繰り広げられる楽しさ。

面白そうでしょう!

本書は「アルセーヌ・ルパン賞」、「ポラール・アン・セリー賞」などのミステリ小説賞を受賞しています。
ハヤカワ・ポケットミステリの一冊として、日本語で読めているのは大変幸運なこと。

続編も『パリ警視庁迷宮捜査班 魅惑の南仏殺人ツアー』という、これまた魅力的なタイトルで邦訳が出ています。
どんなツアーに招待してもらえるのか。
今から楽しみです。

★『パリ警視庁迷宮捜査班』
 ソフィー・エナフ 著 / 山本 知子、川口 明百美 訳
 原題:Poulets Grillés
 早川書房 ハヤカワ・ミステリ 1943
 ISBN:9784150019433 


書籍レビュー文学
スポンサーリンク
スポンサーリンク
Kazuéをフォローする
フランス情報収集局

コメント

タイトルとURLをコピーしました