2011年の春に公開されたルネ・フェレ監督のフランス映画です。
かの有名な、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの実の姉、ナンネルにスポットを当てたストーリー。
モーツァルト一家が、フランス演奏旅行をしていた間のことが描かれています。
姉のナンネル15歳、弟のヴォルフィ11歳。
ナンネルは小さいころから音楽の才能があり、音楽家の父、レオポルト・モーツァルトも、最初は彼女に期待して音楽を教えていたけれど、弟のヴォルフィはその上を行く天才だった。
父もだんだん弟だけを期待し、ナンネルには作曲することを禁止した。
「女性に作曲は難しすぎる」という理由をつけて。
そんな、女性が音楽家になるのは難しかった時代の不条理と、弟の才能の影に隠れてしまったナンネルという女性音楽家の哀しみを描いているのですが、もうひとつ、重要なエピソードがあります。
なんと、フランス王太子とナンネルとの恋!
この部分は、どうもフィクションのようですね。
でも、映画的に華やかで素敵。身分の違う恋って、やっぱり永遠のロマン!
この王太子は、ルイ15世の息子で、フランス革命で有名なルイ16世の父親。ルイ15世の存命中に亡くなったため、王にはなれませんでした。
あくまでも映画の中では、ですが、王太子は内気で、父王が愛人を山ほど作っていることに反発していたそうです。
王族なのに偉ぶらず、優しくて、ナンネルが惹かれるのも分かります。
ナンネルは、ルイ15世の王女のひとりと仲良くなったことで、王太子と出会うことができ(初めは男装してました)、作曲を依頼され、女性としてのナンネルにも関心をもってもらえます。
そして、父に隠れて勉強して作った曲は、王太子も絶賛!
なんという名誉でしょう。
でも、なにしろ相手は王太子。恋愛成就がかなうわけもなく。
王太子の再婚により、二人は別れなくてはならなくなって。
という流れ。
この二人が惹かれあってることも分かるし、王太子が愛人を作りたくなかったから別れるしかないのも分かります。
が、王太子とここまで仲良くなったんなら、ナンネルとしても何かしら作曲家として認めてもらえるような手段を講じることが出来たのではないのかな、と思ってしまいました。
でも、史実に戻さなくてはいけないから、ナンネルをあんまり表舞台に出すことはできないですけどね。
王太子がナンネルを自室に招き、ちょっといい雰囲気になったところで、彼女に暴言を吐いて追い出す場面があります。
ここは、私の見方が甘いのかもしれませんが、ちょっと意味が分かりませんでした。
彼女を愛人にしないために、自分の気持ちを抑えるためなのか、
外にいる家臣たちに怪しまれないように行った演技なのか、
気が触れてしまったのか。。。
でも、こうやって後からいろいろ考える映画というのは、「面白い映画だった」ということですね。
ナンネル役のマリー・フェレと、王女ルイーズ役のリザ・フェレは、監督の実の娘たち。
1歳しか違わないのですが、マリーは年より大人びて、リザは子どもっぽい。
この辺の違和感も、ある意味見所のひとつです。
本格的な演奏シーン、豪華な衣装、ヴェルサイユ宮殿の鏡の間と、歴史好きにはたまりません。
チェンバロ(ハープシコード)の音色が、ナンネルの抑えた動きや表情とあいまって、美しい雰囲気を作っている映画です。
さて、ナンネルは女性である自分の人生をどのように歩むのでしょうか。
★『ナンネル・モーツァルト 哀しみの旅路』
2010年製作/120分/G/フランス
原題:Nannerl, la soeur de Mozart
監督:ルネ・フェレ
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