映画レビュー『彼女のいない部屋』(Serre moi fort)

渋谷Bunkamuraで公開中のもう一つのフランス映画は、名優、マチュー・アマルリックが監督を務めた『彼女のいない部屋』。
アマルリックの長編4作目の監督作品だそうです。

この作品のストーリーに関する情報は、公式サイトでもほとんど記述ナシ。
「家出をした女性の物語、のようだ。」とだけ明かされています。

監督自身が、「彼女に何が起きたのか、映画を見る前の方々には明らかにしないでください。」と言っているそう。
ますます気になりますね!

映画の冒頭では、確かに早朝、女性が家を出るところが描かれています。
自動車に乗ってどこかに向かっているよう。
買い物に出ただけなのか、長期の家出なのか…。

移動する彼女と、家に残された夫と二人の子供たちの様子が交互に映し出されます。
分かるのは、彼女、クラリスが子供たちを愛しているということ…。

時間軸が前後しつつ進むので、どれが今現在の話なのか分かりにくくはあります。
しかし、中盤で、クラリスの状況がだんだんと明らかになっていきます。

彼女の身に起こっていることはもしかして…。

そこからは、謎を追いながらも、彼女の動向に釘付けになってしまいます。

これはおそらく、クラリスが空虚を埋めていく物語。
クラリスの娘が弾くピアノの旋律と共に、美しい映像と、クラリスの様々に変わる表情が浮かび上がります。

そして、仏題の「Serre moi fort(私を強く抱きしめて)」がだんだんと心に響いてくるのです。
できることなら、抱きしめてあげたくなるもの!

見終わった後、パズルのピースを確かめるために、もう一度見直したくなる映画でした。

8月26日より渋谷Bunkamuraのル・シネマほか、全国で順次公開中です。

★『彼女のいない部屋』
2021年製作/97分/フランス
原題:Serre moi fort
配給:ムヴィオラ
公式サイト:https://moviola.jp/kanojo/

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