映画レビュー『ジェラール・フィリップ 最後の冬』

シネ・リーブル池袋にて

現在、「ジェラール・フィリップ 生誕100年映画祭」がヒューマントラストシネマ系列の映画館で開催されています。

36歳という若さでこの世を去った戦後のスター、ジェラール・フィリップの作品が、リマスター版でスクリーンに蘇っているのです。

『ジェラール・フィリップ 最後の冬』は、唯一、彼のドキュメンタリー映画です。
今年の5月に開催された、第75回カンヌ国際映画祭のクラシック部門正式出品作品となっています。

日本では初公開だそうです。
吹き替えナレーションは本木雅弘さんが務めていました。

場面は、ジェラールが海で家族と休暇を過ごすところから始まります。
二人の子供たちと戯れ、楽しそうなジェラール。
しかし、音楽がどこか物悲しく、不吉なものを感じさせます。
この年、1959年の冬に、ジェラールはこの世を去るのです。

映画は、彼が亡くなる年のできごとと、彼の生い立ちとが交互に映し出されて進みます。

時系列が前後するので、時々分かりにくいところもありましたが、彼の早逝が、フランスにとって、映画界にとって、世界にとって相当な損失であったことが感じられる構成になっています。

36歳のヴァカンスのとき、お腹に痛みを感じたフィリップ。
病院で調べるも、異常はなかった。
手術をしてみて初めて、末期の肝臓がんであることが判明したのです。

この事実を彼の妻、アンヌは本人には隠すことにしました。

体調が悪い中で出演したテレビのインタビューや、彼が「20年後に自分が演じる役」を書いたメモなど、彼がこれからも活躍しようと思っていたことは明らかです。

同時に、彼が法律を学ぶためにパリの大学に入ったものの、演劇にのめりこむ様子や、初めての舞台で演じた天使の姿といった生い立ちが描かれ、彼は天性の俳優だったということが分かります。

また、戦争中にドイツに加担し、逮捕された父親を逃がしたこと、反戦運動に身を捧げてきたこと、さらに、若い役者や演劇界のために、たくさんの活動をしてきたことなど、武勇伝がこれでもかと語られます。

早くして亡くなった才能ある人たちの伝記には、名声に耐え切れず、アル中になったり、ドラッグに手を出したり、身を持ち崩したり…というのが良くありますね。
ジェラールが映画『モンパルナスの灯』で演じたモディリアーニのように。

しかし、モディリアーニと同じ年で亡くなったのに、ジェラールは努力家で、家族を大切にしていたようなのです。
5歳年上で元ジャーナリストの妻、アンヌは彼の良きアドバイザーであったようですし、子供たちを大切にしている様子も映っています。

そして、その恵まれた容姿!
彼の演じている場面はもちろん、プライベートの顔も、本当に美しく、凛々しい。

短い映画でしたが、今更彼のファンになってしまうこと間違いなしのドキュメンタリーでした。

映画祭は年明けまで公開されているので、様々な彼の作品を見ることができますよ。

★『ジェラール・フィリップ 最後の冬』
2022年制作/66分/フランス
原題:Gérard Philipe,le dernier hiver du Cid
英題:Gérard Philipe, the last winter
監督:パトリック・ジュディ
全編吹替ナレーション:本木雅弘

★ジェラール・フィリップ生誕100年映画祭
http://www.cetera.co.jp/gerardphilipe/

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