映画レビュー『終電車』(Le dernier metro)

現在、東京の角川シネマ有楽町ほかにて、「生誕90周年上映 フランソワ・トリュフォーの冒険」と題して、トリュフォー監督の名作がリバイバル上映されています。

トリュフォー監督と言えば、ジャン=リュック・ゴダールと並ぶ、ヌーヴェル・ヴァーグの巨匠。
『大人は判ってくれない』のドワネルシリーズや、『突然炎のごとく』といった名作が、映画館で見られるのです。
フランス映画好きにはたまりません!

早速、『終電車』を鑑賞してきました。
1981年にセザール賞に輝き、同年のアカデミー賞やゴールデングローブ賞にもノミネートされた、トリュフォー代表作のひとつです。
しかも、フランスを代表する名俳優である、カトリーヌ・ドヌーヴとジェラール・ドパルデューが出演しているんです。
仏題は「Le dernier metro」。日本語訳もこれを踏襲していますね。

しかし、ストーリーに電車は出てきません。
ほとんどがパリのとある劇場内が舞台となっています。

ナチス占領下のパリ。
モンマルトル劇場の支配人で演出家のルカはユダヤ人だったため、国外へ逃亡中。
ルカの妻で看板女優のマリオン(カトリーヌ・ドヌーヴ)は、ナチスの締め付けが徐々に厳しくなっていく中で、新作の舞台を成功させようと奮闘しています。

実はルカは逃亡しておらず、劇場の地下で息をひそめて生活していました。
マリオンは、夫のために、人目を盗んで地下を定期的に訪問。
同時に劇場を切り盛りし、舞台の稽古もこなします。

そんな中、ヒロインであるマリオンの相手役として、新人俳優のベルナール(ジェラール・ドパルデュー)が雇われます。
二人の息はぴったりで、ともに舞台を作り上げていきますが、役者としての腕を買いながらも、ベルナールへの態度がおかしいマリオン。

一方で、ルカは長い隠れ家生活に徐々に耐えられなくなってきており、なんとか劇場の様子を音だけで聞き出し、演出をしようとします。
誰かに気づかれたら、収容所行きは免れません。

さらに、ドイツ軍と懇意にしている批評家がモンマルトル劇場に目を付け、新作を酷評。
それに腹を立てたベルナールは、批評家に暴力をふるおうとする…。

実は、ベルナールはレジスタンスなのでした。

しかし、この映画のテーマは、ナチでも戦争でもありません。
「恋」なのです!
そう、これは、マリオン、ベルナール、ルカの三角関係を描いた物語なのです。
マリオンの秘めたる思いは、後半になって明かされます。

三人の関係はどうなるのか。
ルカは見つかってしまうのか、劇場は無事に続けられるのか。
サスペンス色のある音楽と相まって、冷や冷やしながら見ていました。

ラストには、ちょっとした仕掛けがあり、見るものを楽しませてくれます。

タイトルの『終電車』の意味は、見る人にゆだねられているような気がします。

映像はリマスター版だそうで、とても鮮やかで、美しかったです。

角川シネマ有楽町では、トリュフォー作品の名場面やポスターが展示されていました。
また、『大人は判ってくれない』の主人公、ドワネルを演じたジャン=ピエール・レオが来日したときの動画も流れています。


「フランソワ・トリュフォーの冒険」は、角川シネマ有楽町では7月14日までですが、他、全国で公開中、または近日公開です。

★『終電車』
1981年製作/131分/G/フランス
原題:Le dernier metro
監督:フランソワ・トリュフォー

★「生誕90周年上映 フランソワ・トリュフォーの冒険」
 オフィシャルサイト

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