フランス文学者・翻訳家の鈴木信太郎さんをご存じでしょうか。
この方は、日本におけるフランス文学研究の草分け的存在です。
1895年生まれ、東京帝国大学文学部にて、フランス文学を専攻し、1925年に私費でいち早くフランスに留学。
その後、マラルメやヴィヨンを研究し、たくさんのフランス文学を翻訳しました。
1960年、フランス政府よりレジオン・ドヌール三等勲章を受けています。
この方の記念館が、東京都豊島区にあり、無料で開放されています。
記念館は、鈴木信太郎氏が住んでいた邸宅で、貴重な研究資料やコレクションが展示されています。
この建物自体がとても貴重で、20世紀前半に増改築を繰り返して建てられており、豊島区指定有形文化財に指定されています。
たくさんの資料が詰まった書棚が並ぶ書斎棟、明治20年代に作られた座敷棟、味わい深い茶の間・ホール棟、そして日当たりのよい広い庭を見学することができます。
書斎には、鈴木氏がデザインしたステンドグラスがはめ込まれており、そこにはマラルメの有名な言葉が刻まれているそうです。
私が見学に訪れた時は、鈴木氏が翻訳したシラノ・ド・ベルジュラックが特集展示されていました。
学芸スタッフによる解説もあり、シラノの初演時の様子などを聞かせていただきました。
また、書斎には、夏目漱石や与謝野夫妻といった文豪の直筆本や、鈴木氏が息を引き取ったテーブルなどが展示されていて、「日本におけるフランス」の歴史に思いを馳せることができます。
重厚な本棚にも、フランス文学作品がびっしり。
大正~昭和初期、日本にフランス文学が広まってきた熱い時代の雰囲気を味わいたくなったら、ぜひ訪れてみてください。
コメント